LOGIN第296話 女にうつつを抜かして、友達も捨てやがって
美月は蓮の視線とぶつかり、思わず頬をほんのり赤く染めた。
……別に照れているわけではない。ただ、この男の目があまりにも露骨で、何を考えているのか丸分かりなのだ。
「なあ……」
――ヤバい、このままじゃ。
美月は慌てて口を挟んだ。
「お腹が空いたわ。ご飯にしましょう」
その一言で、蓮のよこしまな考えはあっという間に打ち砕かれた。
彼は深く息を吸い、胸の中で騒ぎ立てる欲望を、もう一度必死に押さえ込んだ。
「行こう。まずは飯だ」
やはり、人間と動物には根本的な違いが
第296話 女にうつつを抜かして、友達も捨てやがって美月は蓮の視線とぶつかり、思わず頬をほんのり赤く染めた。……別に照れているわけではない。ただ、この男の目があまりにも露骨で、何を考えているのか丸分かりなのだ。「なあ……」――ヤバい、このままじゃ。美月は慌てて口を挟んだ。「お腹が空いたわ。ご飯にしましょう」その一言で、蓮のよこしまな考えはあっという間に打ち砕かれた。彼は深く息を吸い、胸の中で騒ぎ立てる欲望を、もう一度必死に押さえ込んだ。「行こう。まずは飯だ」やはり、人間と動物には根本的な違いがある。人間には、自分を律する理性があるのだ。もちろん蓮としては、今この瞬間だけは本気で動物になりたいと思っていたのだが。美月はふと思い出したように言った。「まだ家に電話していなかったわ。先に電話しておくね……」蓮はすぐに答えた。「もう連絡しておいた。食べてから電話すればいい」美月は少し考え、それもそうだと思った。二人は連れ立って階下へ降りていった。翔太はまだ帰っておらず、リビングのソファに座っていた。美月の姿を見ると、やはり一瞬、目を奪われた。だが、蓮の鋭い視線がすぐさま飛んできた。
第295話 嫁に金を使わないで、何のために稼ぐんだ?蓮はすでに美月のそばまで来ていた。彼女の問いにも、気にした様子もなく答えた。「多いか? 全然そんなことないぞ」――まだまだだ。時間さえあれば、デパートを何軒も空っぽにするくらい買い込んでやるのに。それに、ここにあるのは寝室のクローゼットに収まっている分だけだ。廊下を挟んだ向かい側には、さらに大きなクローゼットがある。あっちは彼女にゆっくり探検させてやろう。美月は、部屋いっぱいに並んだ服や靴、帽子、ジュエリーの数々を眺めた。それから蓮の「全然多くない」という言葉を聞いて、呆れてものも言えなかった。――ここに来ることなんて、そう頻繁にはない。それなのに、こんなに大量のものを買い込んで置いておくなんて、もったいないんじゃないかしら。そう思ったことを、そのまま口にした。蓮はすぐに反論した。「お前にプレゼントするものが、どうして無駄なんだ? 一つだって無駄なものなんかないぞ」――たとえ着てくれなくても、そこにあるだけで俺の心は満たされるんだ。美月は言葉を失った。「……」蓮は楽しそうに服を物色し、一着のドレスを選び出した。淡いピンクのロングドレスだった。「今日はこれにしたらどうだ? なかなか似合うと思うぞ」美月は差し出されたドレスに目を向けた。淡いピンクのロングドレスで、デザインもシンプルながら上品だった。
第294話 嫁は俺のことが好きなのか? それとも好きじゃないのか?しばらくして、ようやく我に返った美月は、首を横に振った。「それはいいわ。こっちにはそんなに頻繁に来るわけでもないし……そこまでする必要はないわ」――結婚しただけで、あっという間に大富豪の仲間入りってわけ。正直、意味が分からない。なんでこの人、こんなに何かと贈りたがるのかしら。本当にお金があり余って、使い道に困ってるのかしら。蓮は美月が受け取ろうとしないと知ると、たちまち焦り始めた。「もしかして、まだ俺のことを好きになってくれてないのか?」美月は言葉に詰まった。「……」――何を言い出すのよ。一方、翔太は目を大きく見開き、二人を食い入るように見つめていた。その目には、ゴシップ好きの血が騒いでいるのがありありと表れていた。「正直に言ってくれ。俺のこと、嫌いなのか?」蓮はなおもしつこく食い下がった。美月がなかなか答えてくれないせいで、さっきまでの上機嫌は一瞬にして吹き飛んでしまった。胸の中が苦いもので満たされたような気分だった。その顔からは、すっかり生気が失われていた。さっきまで笑みをたたえていた目も、今は輝きを失って、しぼんでいた。美月は何も言えなかった。「……」――どう答えればいいのよ。ここで好きだなんて言えるわけないでしょう。
第293話 大きなサプライズ美月は、まだ自分を抱きしめている蓮を押し返した。「もう降りるわよ」彼女の顔は桃の花のようにほんのりと赤く染まっていた。唇もいつも以上にふっくらと赤くなっている。その姿を目にした途端、蓮の眼差しが一段と熱を帯びた。美月は、彼が何を考えているのかすぐに察した。またうっとりして動かなくなるのを防ごうと、慌てて手を伸ばし、彼の腰のあたりを軽くつねった。もちろん、蓮は痛くもなんともない。だが、美月が珍しくこんなことをするものだから、ここはひとつ、痛がってみせることにした。「痛っ! 痛いって!」わざとらしく声を上げる蓮を見て、美月は呆れた。……芝居が下手すぎるでしょ。彼女はじろりと彼を睨んだ。「もういいから、降りるわよ」後部座席で長居しすぎた。蓮も、何事にもほどほどというものがあるのは分かっていた。――これ以上ふざけていたら、本当に怒らせてしまうから。うちの嫁は、そういうことを気にするたちなのだ。そこで、彼はすぐに機嫌を取るように答えた。「分かった。今すぐ降りるよ」素早くドアを開けて先に車を降りると、蓮は少し身をかがめ、手を差し出した。「手を貸すよ」美月は差し出された手を見て、ほんの一瞬ためらった。
第292話 まだキスし足りないのか――白井家の話は、もううんざりだ。蓮はそのまま話題を変えた。「ここから荘園までは一時間くらいかかる。疲れたか? 疲れてるなら少し寝ててもいいぞ。食事は家に着いてからにしよう。向こうの執事が、料理人にたっぷりうまいものを用意させてあるからな」それを聞いた翔太が口を挟んだ。「蓮はお前が海鮮好きだって知ってて、わざわざ別の場所から取り寄せたんだぜ。しかも、聞いた話じゃ、海で獲れたばかりのものらしい。すごく新鮮なんだとさ」蓮は翔太をぎろりと睨んだ。「お前は本当に口数が多いな。黙って運転してろ」――せっかく嫁と話してるのに、横から口を出してくる。まったく、うっとうしいことこの上ない。連れてこなきゃよかった。だが、今さら後悔しても遅い。翔太の図々しさは、もはや芸術の域だ。一度絡まれたら、そう簡単には振りほどけない。翔太は片手でハンドルを握ったまま、もう片方の手で口にチャックをする仕草をした。「はいはい、黙りますよ。せっかくの夫婦の時間を邪魔しちゃ悪いからな。そうだ、この仕切り板を上げてやろうか?」最後の一言だけは、やけに真剣な口調だった。美月は呆れてしまった。「……」――蓮がこの男をうざがるのも無理はないわ。次の瞬間、蓮はあっさりと同意した。「分かってるなら、さっさと上げろ」美月は再び言葉を
第291話 警戒するに決まってるスマホはそのまま優香の目の前に突きつけられていた。そのため、優香は否応なく画面に映る写真に目を落とした。そこには、顔を歪めた醜い女が写っていた。……これ、誰?自分?優香は一瞬、信じられないという表情になった。悠真はそんな妹の様子を見て、先ほど撮った写真が効いたのだと察し、スマホをしまった。「行こう。これ以上そんなふうに取り乱してたら、ここでの醜態が国内まで広まるぞ。たった一人の男に執着して、お前が今どれだけみっともないか、よく見ろ」ここはM国とはいえ、空港に国内から来た人間がいないとは限らない。帝都から来ている人だっているかもしれないのだ。優香の顔が一瞬こわばった。それから、見る見るうちに表情を曇らせ、悠真の後についていった。二人の間には、少し距離があった。もはや、昔のような兄妹の情など残っていなかった。やがて、二人は道路脇までやって来た。車はすでにそこで待っていた。しかも、彼らの車のすぐ近くでは、蓮が美月を気遣いながら車に乗せているところだった。その光景を目にした途端、優香の目は再び怒りで赤くなった。――これも何かの因縁か。せっかく落ち着いた妹がまた騒ぎ出さないよう、悠真は慌てて声をかけた。「優香、乗るぞ」優香はしぶしぶ視線をそらした。車に乗り込んでからも、その表情はまだ平静を保